持続可能な観光

岐阜県:観光・食・モノの振興を進めることで持続可能な地域づくりを推進(S)

団体種別 自治体
団体名 岐阜県
住所 岐阜市
事例発生時期 2007

事例概要

岐阜県では、全国に先駆けて「持続可能性」に着目した施策を推進してきました。例えば、2007年から「岐阜の宝もの認定プロジェクト」を開始、また2009年からはこれらの観光資源を世界に知っていただけるよう、「飛騨・美濃じまん海外戦略プロジェクト」をスタートしました。その特徴は、①「観光・食・モノ」の“三位一体”でのプロモーション ②世界を意識した戦略 ③ブランディング“GIFU, Timeless Japan, Naturally an Adventure”です。
トップの考え方に基づく戦略に加えて、こうした地道な準備を観光部署の推進リーダーが情熱をもって丁寧に進めることで、観光を活用した持続可能な地域経営の実現ステップを進めることができました。

<はじめに>

岐阜県では、全国に先駆けて「持続可能性」に着目した施策を推進してきました。例えば、2007年から「岐阜の宝もの認定プロジェクト」と銘打ち、「東濃地方の地歌舞伎と芝居小屋」(恵那市・中津川市・瑞浪市)や「小坂の滝めぐり」(下呂市)など、全国的な地名度は低いものの、先人たちのたゆまぬ努力により受け継がれてきた地域の優れた伝統文化、歴史、自然等の資源を磨き上げるとともに、各種保存団体や後継者育成等のサポートを通じて、国内外に通用する観光資源として活用する取組を進めています。

2009年からはこれらの観光資源を世界に知っていただけるよう、「飛騨・美濃じまん海外戦略プロジェクト」をスタートしました。その特徴は3つです。

① 「観光・食・モノ」の“三位一体”でのプロモーション

限られた予算の中で最大限の効果を発揮するために、県の部局の壁を越え、「観光」と「食(飛騨牛や鮎など)」「モノ(陶磁器、和紙、木工、刃物など)」を、一体的にプロモーションするというものです。今では、この三位一体プロモーションがステージアップし、「自然・環境」「農林業」「人道精神」「まちづくり」「交流」などのテーマも加わり、岐阜県の魅力を総合的に発信する取組が行われています。

② 世界を意識した戦略

こうした戦略の根底には、知事の『世界で評価されるものは必ず日本でも評価される。それなら初めから海外を視野に入れた戦略を立てるべき』という考えがあります。このため、岐阜県にはユネスコ世界文化遺産、ユネスコ無形文化遺産、FAO世界農業遺産など世界に認められた観光資源が数多く存在しています。

③ ブランディング“GIFU, Timeless Japan, Naturally an Adventure”

岐阜県が世界に誇る観光資源に共通しているのは、「豊かな自然の下、先人から受け継がれてきた伝統文化、匠の技が、長い時を超えて、人々の暮らしの中に息づいている」ということであり、決して観光用に人工的に作り上げてきたものではないという点です。岐阜県のプロモーション活動は、パンフレット、動画、WEBサイトなどの広報物から着地型体験ツアーに至るまで、すべてこのブランディングを踏まえたものとなっています。事実、長良川鵜飼、美濃和紙、下呂温泉など岐阜県を代表する魅力の数々は、多様な人材の活躍のもと、1300年の時を超えて今に受け継がれ、世界に認められたブランドにまで磨き上げられた「持続可能な地域資源」であり、岐阜県のブランド価値そのものが、まさにSDGsにつながっていました。

上記①のように、岐阜県は、全庁的な協力を得やすい素地が築かれていたため、観光を活用した地域経営に取り掛かる準備段階から、効率的に、課題を明確化し、掲げるべき指標の収集をすることができました。また、上記②のとおり、ユネスコ世界文化遺産「白川郷合掌造り集落」やFAO世界農業遺産「清流長良川の鮎」、ユネスコ無形文化遺産「本美濃紙」など、SDGsの理念をいわば体現する各種資源を通じて、観光を活かした持続可能な地域経営の必要性を受け入れることは岐阜県にとっては自然の流れでした。さらに、上記③のとおり、先人から受け継がれてきた岐阜県の“宝もの”は、人々の暮らしの中に息づいているため、その魅力を観光事業者や県民が改めて知り、それらを守っていくことが経済的なメリットにも繋がるということを容易に想像できる状況にありました。

以上のように、トップの考え方に基づく戦略に加えて、こうした地道な準備を観光部署の推進リーダーが情熱をもって丁寧に進めることで、観光を活用した持続可能な地域経営の実現ステップを進めることができました。

<ステップA> 地域のなりたい姿と課題を明確にする

「SDGs未来都市」である岐阜県は、県の最上位計画である「「清流の国ぎふ」創生総合戦略」にSDGsの理念を位置付け、2020年度には、県の総合政策を担う清流の国づくり政策課に「SDGs推進監」を設置、翌年度には同課にSDGs推進室を設置、さらに、観光企画課には「サステイナブル・ツーリズム推進係」を設置するなど、これまで地道に行ってきた持続可能なまちづくりを、「オール岐阜」で推進するための体制を整えてきました。その1つの成果の現れとして、2020年には、ユネスコ世界文化遺産「白川郷合掌造り集落」を有する白川村が、翌2021年には、FAO世界農業遺産「清流長良川の鮎」の対象地域を含む長良川流域(岐阜市、関市、美濃市、郡上市)が、それぞれグリーン・デスティネーションズが実施する表彰制度において、優れたグッドプラクティスストーリーとして「世界の持続可能な観光地100選」に選定されました。今後は、こうした取組をひとつのモデルとして共有・情報発信を行い、県内各地における自律的な取組の促進、全県展開を図っていくこととしています。

岐阜県では、2015年、長良川上中流域の「清流長良川の鮎」が、FAOの世界農業遺産に認定されました。これは、河川環境保全活動など人が適切に管理することで長良川の清らかな流れが保たれ、その清流に育まれた漁業、農業、林業などの産業があり、鵜飼漁などの伝統漁法や岐阜和傘、美濃和紙、関の刀、郡上本染などの伝統文化、鮎寿司などの食文化に恵まれ、更にそれを次世代につないでいく一連の社会(人)と経済と自然環境の自律的な好循環システムのことを言います。まさにSDGsの理念を体現するもので、認定以降、県と流域自治体、関係団体からなる「世界農業遺産「清流長良川の鮎」推進協議会」を中心に、「清流長良川の鮎」を保全、活用、継承するための取組を推進しています。ことさら観光の分野においては、流域一帯となった観光地域づくりを進める「長良川流域観光推進協議会」を発足(2016年)し、当協議会を中心に、市町村や部局、業種の垣根を超え、長良川流域の周遊・滞在促進など観光を活用した地域経営の取組を進めています。

前述の「岐阜の宝もの認定プロジェクト」(2007年~)を通じて、「東濃地方の地歌舞伎と芝居小屋」や「小坂の滝めぐり」を含む6つの地域の誇るべき資源を「岐阜の宝もの」として認定しました。また、2014年から2015年にかけては、本美濃紙、曽代用水、高山祭、古川祭、大垣祭、そして、清流長良川の鮎など、次々と本県の地域資源が世界に誇る遺産として登録されるなど、本県の魅力は観光資源として世界的に十分に通用するものであると確かな手ごたえを得、これらの魅力を世界に発信するための様々な取組を推し進めてきました。こうした一連の取組を通じ、これらの資源を守り、活かし、未来に受け継いでいくこと、そのための人づくり(後継者、語り部育成など)を進めることが、観光を活用した持続可能な地域づくりのために解決すべき課題であるとの認識に至りました。

先人たちのたゆまない努力により受け継がれ、人々の暮らしの中に息づいている豊かな自然や地域の伝統文化、歴史などの資源そのものが、岐阜県が世界に誇るべき魅力であること、そしてその魅力の根底には、これら資源を世界に認められるブランドにまで磨き上げ(ブランディング)、そして、未来につなぐための人々の持続可能な取組みがあることを、市町村や民間事業者等に広くご理解いただくため、県内各地における講演会、「世界農業遺産「清流長良川の鮎」推進協議会」への出席、観光事業者への説明会など、草の根的な活動地道に続け、様々な利害関係者との意識共有を図ってきました。

<ステップB> 解決する課題を特定し、取組、指標を具体化する

岐阜県では、2015年に認定された世界農業遺産「清流長良川の鮎」を守り、活かし、伝える取組を進めるに当たり、流域自治体や関係団体からなる協議会(前述)を設立し、また、各種課題への対応策を示す「世界農業遺産保全計画」を定めています。これにより、観光を活用した持続可能な地域づくりを推進する上で解決すべき課題や解決に資する取組の明確化や、利害関係者との合意形成を比較的円滑に進めることができました。

具体的には、地域の伝統文化や豊かな自然を楽しむ体験(サステイナブル・ツーリズム)を通じて後継者の育成、地域経済の持続的発展に貢献すること、サステイナブル・ツーリズムのメッカとしての岐阜県の魅力を国内外に発信することなどを、取り組むべき重点課題として設定しました。

重点課題を解決する取組の検討、共有の実際

・岐阜県では、前述の世界農業遺産「清流長良川の鮎」推進協議会など、既存の枠組みを活かし、取り組むべき課題の検討、共有化を図ってきました。

重点課題①:サステイナブル・ツーリズムを通じた後継者育成、資源の継承への貢献

・インバウンド向けに、伝統工芸等を体験できる着地型ツアーを新たに造成し、 “匠の技”が世界から評価されるものであることを職人の皆さんに認識してもらうとともに、多くの観光客による体験及び製品購入を通じた所得増、ひいては事業継続の促進に寄与することが期待されています。(「自然」「匠の技」「伝統・文化」等の着地型体験ツアーを約50本造成)

「自然」「匠の技」「伝統・文化」等の着地型体験ツアー

重点課題②:岐阜県の様々なサステイナブルな魅力を語れる人材の育成、雇用の創出

・匠の技、自然、文化・伝統、食、サステイナブルなど、岐阜県ならではの魅力を日本語及び英語語れるガイドの育成を目指して、案内マニュアルを制作。座学と実地研修を織り交ぜ、3年間で9テーマ、計270名のガイドが育成されました。

重点課題➂:若い世代及び観光事業者等への意識醸成及び戦略の周知、地域のサステイナブルな魅力の認知

・教育旅行の誘致促進を目的に、若い世代に対し、岐阜県の様々な観光資源の魅力を、サステイナブルな観点から紹介する「サステイナブル・ツーリズム」の冊子を新たに制作しました。

若い世代及び観光事業者等への地域のサステイナブルな魅力の周知

重点課題④:国内外へ、岐阜県のサステイナブルな魅力の発信(知名度向上から経済効果へ)

・UNWTOが推奨する指標GSTCの評価機関であるGreen Destinationsから、2020年に白川村、翌2021年には長良川流域と、2年連続で優れたグッドプラクティスストーリーとして「世界の持続可能な観光地100選」(世界TOP100)に選定されたことを、YouTubeやWebサイト及びSNS等により世界へ発信。また、市町村及び観光事業者と、世界TOP100のロゴを共有し、あらゆる関係者から情報発信してもらうことで、日本のサステイナブル・ツーリズムのメッカとして、知名度向上とコロナ後の早期の誘客回復を目指しています。

サステイナブル・ツーリズムのメッカとしての魅力を世界に発信

こうした取組を通じて、世界に誇る自然、歴史、伝統、文化などの地域資源を大切に守り伝えて来てくれた先人たちに感謝するとともに、今を生きる私たち一人ひとりの中に、子供や孫の代までそれを受け継いでいきたいという思いが生まれることで、岐阜県のサステイナブルな魅力が、自律的好循環の下、未来に向け末永く続くことに繋がると考えているとのことです。

☞語り部の育成や教育旅行の実施は、地域の伝統文化の理解につながっており、その結果、後継者確保に向けた補助金支出といった施策への理解も進んでいます。このように、魅力あるコンテンツによる誘客(経済面)と、地域への誇り(シビックプライド)の育成と伝統工芸の継承(社会・文化面)の取組が相互に好影響を与えています。裾野が広い観光を活用して総合的に課題を解決していく持続可能な地域経営につながる好例の一つです。

観光部署の推進リーダーが、庁内部局を横断し、18の所属に対し、持続可能な観光に取り組む目的やこれによる国際競争力の強化及び経済的なメリット等を、時間をかけて粘り強く説明して回り、関連する計画、資料、資料、具体事業を収集・分析することで、活用可能な指標の候補(案)を数多く集めることができました。現在は、これらの候補(案)を踏まえ、前述の重点課題に相当する指標の選定を行っています。候補指標(案)はJSTS-Dを参考に整理しており、持続可能なマネジメント関連で41指標、社会経済のサステナビリティ関連で25指標、文化的サステナビリティ関連で22指標、環境のサステナビリティ関連で26指標、計114の指標です。

<ステップC> 指標を計測し、分析・評価し、公表、改善す

現在は、関係者総動員によりコロナ対策に全力で取り組んでいるところです。コロナ禍が治まり次第、指標の選定等作業が引き続き進められることとなっています。

<出所>

国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所、観光庁、運輸総合研究所作成の

「観光を活用した持続可能な地域経営の手引き」より

https://unwto-ap.org/research/research/#book06