「ガストロノミーツーリズムに関する国際会議」では、これまで食文化の本質、無形文化遺産の要素及び持続的な地域の発展を促進する手段としてのガストロノミーと観光の相互関係について議論を重ねてきました。第4回目となるこの会議は初のアジアのタイ・バンコクで2018年5月30日~6月1日に開催され52カ国から600 名の参加がありました。
会議ではガストロノミーツーリズムを、地域・テクノロジー・商業化戦略にどう利用し、持続可能な開発を実現するための方策を探る討議がなされました。
オープニングセレモニーに続く円卓討議セッションにおいて、奈良県の荒井知事が参加され、奈良県における観光客の現況および、ガストロノミーを利用してどのように魅力的な観光地にしていくかの報告がありました。発表の中で、「観光は思い出を作る。美味しいものを食べた時、味は写真に残すことはできないが、誰と一緒でどんな楽しい会話をしたのかを思い出せば幸せを復元できるので、観光の中では食は大事な要素である。」という発表は、他の討議者や参加者から同感を得ました。
また、ガストロノミーツーリズムに携わる関係者がテクノロジーやビッグデータを用いた事例を紹介し成功事例等が共有され、以下の点について議論されました。
- テクノロジーは革新といった大きな可能性を持つ手段である。
- ガストロノミーは人と場所が重要であり、テクノロジーを活用してその土地ならではの伝統文化を保存し、観光客に対する豊かな体験を提供することができる。
- ガストロノミーツーリズムは持続可能な開発目標(SDGs)において食品廃棄物や地域のエンパワメントや雇用の創出といった政策や企業の方針に貢献できる。
- 中小企業がデジタルトランスフォーメーションに参画できる制度を整備することが必要である。
- 中小企業を観光のバリューチェーンに参画させるよう支援することが大切である。
- ソーシャルメディアを通して、旅行者自身がガストロノミーツーリズムの体験を情報発信することは効果的である。
- ガストロノミーツーリズムに対する消費者のモチベーションや行動をより理解するための更なる研究が必要である。
- 上記を満たすためのより充実した人材教育及び研修が必要である。
今回の会議では、テクノロジーを活用してガストロノミーツーリズムを促進する新規企業の実例も上げられました。また、日本の食に対して洗練されたイメージがあり、各スピーカーから訪問先として好事例としての紹介されているのが印象的でした。
第5回はサン・セバスティアン、第6回はベルギー・フランダースで開催が予定されています。